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ペットの預かり契約書|事前説明は義務?「一切責任を負いません」が無効になる理由

文:Damien·

ペットショップが犬や猫を販売するときは、契約前にお客様へ対面で説明することが、法律で義務づけられています。では、ペットホテルやトリミングサロン、ペットシッターにも、同じ義務があるのでしょうか。

結論からいうと、動物を預かる事業者(保管業)には、販売業と同様の事前説明義務はありません。契約書の記載事項も、法律では定められていません。ただし、何を書いてもよいわけではなく、契約書に記載しても無効になる条項があります。この記事では、条文と公的資料をもとに、預かり契約書を作成する際に押さえておきたい点を整理します。

預かり前の説明は義務か

対面説明が義務づけられているのは販売業者

動物愛護管理法21条の4は、犬や猫などを販売する第一種動物取扱業者に対し、購入を希望する人に事業所で動物の現在の状態を直接見せたうえで、対面で説明することを義務づけています。この規定の対象は販売業者であり、動物を預かる保管業者は含まれていません。

基準省令(第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令)には、説明内容を記載した書面を交付し、お客様の署名によって確認を得るといった手続きも定められています。ただし、これも販売業者を対象とした規定であり、保管業者には同様の定めはありません。

ペットホテル、トリミングサロン、ペットシッターはいずれも保管業

環境省は、保管業の例として「ペットホテル業者、美容業者(動物を預かる場合)、ペットのシッター」を挙げています。動物愛護管理法上、ペットホテル、動物を預かるトリミングサロン、ペットシッターはいずれも保管業に分類され、契約前の説明について特別な義務は設けられていません。

保管業者が押さえておきたいルール

一方、保管業者にも、広告表示や職員の配置、動物の受け入れ・管理に関するルールがあります。

  • 広告の表示:ウェブサイトを含む広告には、氏名または名称、事業所の名称と所在地、業種(保管)、登録番号、登録年月日と有効期間の末日、動物取扱責任者の氏名を表示する必要があります(基準省令2条)。
  • 重要事項を説明する職員の配置:事業所ごとに、お客様に「適正な動物の飼養及び保管の方法等に係る重要事項」を説明する職員を置く必要があります。この職員は、半年以上の実務経験、学校の卒業、試験への合格のいずれかの要件を満たさなければなりません。事業所外で説明する職員にも同じ要件が適用され、飼い主の自宅を訪問して説明するペットシッターもこれにあたります(施行規則3条)。ただし、説明の内容や方法、時期までは定められていません。
  • 受け入れ時の健康確認:動物を新たに受け入れるときは、その動物が健康であることを、目視または契約の相手方への聞き取りによって確認し、必要に応じて他の動物と接触させないようにします(基準省令2条)。
  • 預かった動物の個別収容:保管業者は、感染症のまん延やけんかを防ぐため、預かった動物を個別に収容します。また、動物をケージなどから出すたびに、清掃・消毒を行います(基準省令2条)。

💡 受け入れ時の健康確認には、問診票を活用すると便利です。預かるたびに飼い主に記入・署名してもらうことで、健康状態を確認した記録を残せます。

都道府県や政令指定都市は、条例で独自の基準を定めることができます(動物愛護管理法21条4項)。登録先の自治体の条例も確認しておきましょう。

契約書の記載事項:法律の定めと一般的な項目

法律で定められた記載事項はない

保管業の契約書について、法律で定められた記載事項はありません。ただし、ウェブサイトに掲載した利用規約に一括して同意してもらう形式をとる場合は、民法の「定型約款」に関するルールが適用されることがあります。お客様の利益を一方的に害し、信義誠実の原則に反する条項は、合意がなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。

利用規約によく見られる項目

今回確認した公的資料では、都道府県や業界団体が公開する契約書のひな形は見つかりませんでした。民間事業者の利用規約では、次のような項目がよく見られます。

ペットホテル

  • 飼い主の本人確認
  • 狂犬病予防注射・混合ワクチンの接種証明書(1年以内のもの)
  • ノミ・ダニの予防
  • 猫の場合は、猫白血病ウイルス(FeLV)と猫免疫不全ウイルス(FIV)の検査結果
  • 受け入れ可能な年齢
  • 病気のある動物、発情中・妊娠中の動物、かみ癖のある動物の受け入れ可否
  • 緊急連絡先と、動物病院での治療に関する事前の同意
  • フードの持ち込み
  • 面会の可否
  • お試し宿泊
  • 受け入れ・引き取りの時間
  • 引き取りが遅れた場合や、動物が引き取られない場合の対応
  • キャンセル料
  • 責任の範囲

ペットシッター

  • 鍵の受け渡し・返却の方法
  • 交通費
  • キャンセルや日程変更の条件
  • 留守宅の防犯
  • 個人情報の取扱い

⚠️ 実際の利用規約には、「不可抗力による事故については一切の責任を負いかねます」といった表現が使われているものもあります。不可抗力の場合に限るのであれば、法律上の責任の範囲と変わりません。しかし、対象を限定せずに責任を全面的に免除する書き方では、条項そのものが無効になります。

消費者契約法で無効になる条項

飼い主が個人の場合、預かり契約は消費者契約にあたり、消費者契約法が適用されます。法律上、動物は「物」として扱われるため、預かった動物のけがや死亡は、物に生じた損害として扱われます。

条項の例扱い根拠
けが、病気、逃走、死亡について、事業者が一切責任を負わない無効8条1項1号・3号
故意または重大な過失による損害についても、賠償額に上限を設ける無効8条1項2号・4号
責任の有無や範囲を事業者が決める無効8条1項
軽過失の場合に限ることを明示せず、賠償額に上限を設ける(「法令に反しない限り、1万円を上限とする」など)条項全体が無効8条3項
「軽過失の場合に限り、○円を上限とする」原則として有効。ただし10条による制限あり8条3項
事業者の債務不履行による飼い主の解除権を放棄させる無効8条の2
同種の契約の解除で事業者に生じる平均的な損害を超えるキャンセル料超える部分が無効9条1項
飼い主の利益を一方的に害し、信義誠実の原則に反する条項無効10条

「法令に反しない限り」だけでは、上限条項が無効になる

8条3項は、2023年6月1日に施行されました。賠償額に上限を設ける条項は、軽過失の場合に限ることを条項内で明示していなければ、無効になります。「法令に反しない限り」といった表現だけでは、軽過失の場合に限ることが明確にならず、軽過失の場合の上限も含めて、条項全体が無効になります。

上限を設ける場合は、たとえば次のように、故意・重大な過失の場合と軽過失の場合を分けて記載します。

当店の故意または重大な過失による場合は、損害の全額を賠償します。軽過失による場合に限り、○円を上限として賠償します。

ただし、動物が死亡した場合の賠償額の上限を利用料金と同額にするなど、上限が極端に低い場合は、10条によって無効と判断される可能性があります。どの程度の上限額まで認められるかについては、解釈が分かれます。

キャンセル料は平均的な損害を踏まえて設定する

キャンセル料のうち、同種の契約の解除で事業者に生じる平均的な損害を超える部分は無効です(9条1項)。ほかの予約を断ったことによる損失や、すでに手配したスタッフの費用などを踏まえて金額を決めておくと、キャンセル料の根拠を説明しやすくなります。

事故や病気が起きた場合の責任

動物を預かる事業者の注意義務

ペットホテルの契約は、民法の寄託契約(657条)にあたると考えられます。報酬を得て動物を預かる事業者は、善良な管理者の注意(善管注意義務)をもって動物を保管しなければなりません(民法400条)。無報酬の場合は、自分の財産と同じ程度の注意を払うこととされています(民法659条)。ただし、商人が営業の範囲内で預かる場合は、報酬を受けていなくても、善良な管理者の注意が必要です(商法595条)。

トリミングや、飼い主の自宅を訪問するペットシッターの契約については、請負にあたるのか、準委任(民法656条)にあたるのかについて、見解が分かれます。ただし、いずれの場合も、預かった動物に注意を払う義務があることに変わりはありません。

事業者が責任を免れるには

預かっている間に動物がけがをしたり、逃げたり、死亡したりした場合、飼い主は事業者の契約上の責任を問うことができます(民法415条)。このとき、事業者は、その損害が事業者の責めに帰することができない事由によるものであることを示さなければ、責任を免れません。

また、従業員が起こした事故については、事業者も責任を負います(民法715条)。預かっている動物が他人にけがをさせた場合は、その動物を管理している事業者が責任を負い、相当の注意をもって管理していたことを示さなければ、責任を免れません(民法718条)。

保険の補償範囲を確認する

一般的な施設賠償責任保険では、預かっている物(管理財物)の損害は、補償対象外となっているケースが多く見られます。預かった動物の事故に備えるには、受託者賠償責任保険への加入が必要かどうかを確認しましょう。保険への加入は法律上の義務ではありません。

出張トリミングやペットシッターのように飼い主の自宅で作業する場合は、訪問先での事故も補償対象になるか、保険会社に確認しておく必要があります。

ワクチン接種証明書の提出は法律上の義務か

犬に狂犬病の予防注射を受けさせることは、法律で定められた飼い主の義務です。

  • 犬を取得した日(生後90日以内の子犬は、生後90日を過ぎた日)から30日以内に市町村に登録し、鑑札を着ける(狂犬病予防法4条)
  • 毎年1回、狂犬病の予防注射を受けさせ、注射済票を着ける(同法5条)

一方、混合ワクチンの接種、ノミ・ダニの予防、猫のFeLV・FIV検査は、法律上の義務ではありません。ただし、事業者が契約の条件として求めることはできます。

動物愛護管理法21条の2は、第一種動物取扱業者に対し、動物の健康状態を日常的に確認し、必要に応じて獣医師の診療を受けさせるなど、感染症の予防に努めることを求めています。証明書の提出を求める法律上の義務はありませんが、ワクチン接種証明書は、感染症の予防に注意を払っていたことを示す記録の一つになります。

電子契約・電子署名は有効か

契約は、書面がなくても、申込みと承諾があれば成立します(民法522条2項)。預かり契約を電子契約で結ぶことも可能です。

裁判などで契約書の成立の真正が争われた場合、紙の契約書は、本人の署名または押印があれば、真正に成立したものと推定されます(民事訴訟法228条4項)。電子データの場合も、本人だけが行うことができる電子署名があれば、同様に、真正に成立したものと推定されます(電子署名法3条)。この要件を満たさない電子契約も有効ですが、成立の真正については、ほかの証拠も含めて裁判所が判断することになります。

保管業には事前説明の方法についての定めがないため、説明や同意の手続きを電子的に行うこともできます。

消費生活センターに寄せられる相談

国民生活センターは、「ペット」に関する相談件数を年度ごとに公表しています。ただし、ペットホテル、トリミング、ペットシッター別の件数は公表されておらず、紹介されている事例も、主にペットの購入に関するものです。

サービス別の公的な統計はありませんが、預かりサービスで想定される主なトラブルには、次のようなものがあります。

  • トリミング中のけが(はさみやバリカンによるけが、トリミング台からの落下など)
  • 預かり中の逃走
  • ペットホテルでの熱中症や死亡
  • ほかの動物によるかみつき
  • 預かり後に判明した病気
  • キャンセル料をめぐるトラブル
  • 飼い主が引き取りに来ないケース

こうしたトラブルを防ぐうえで、契約内容の明確化や預かり時の記録が役立ちます。

izyPetで作成・署名できる契約書

izyPetでは、予約ごとに契約書を作成し、お客様に署名してもらうことができます。契約書には、次の内容が記載されます。

  • 契約番号と作成日
  • お客様の氏名、住所、電話番号、緊急連絡先(登録されている場合)
  • 事業者の名称、施設名、住所、電話番号
  • 預かる動物の名前、種類、品種、識別番号(マイクロチップ番号などが登録されている場合)
  • サービスの内容と期間、料金、税額、デポジット
  • 事業者の利用規約へのリンク(設定している場合)
  • 事業者が自由に設定できるチェック項目(「必須」に設定した項目にチェックがない場合は、署名できません)
  • 事業者が自由に記載できる追加情報
  • お客様と事業者の署名、署名者の氏名、署名日時

事業者の署名を登録しておけば、作成時にメール送信を選択するだけで、契約書がメールでお客様に届きます。あとから送信することもできます。お客様はizyPetのアカウントから契約書を開き、画面上で手書きの署名を行えます。対面の場合は、事業者の端末でお客様に署名してもらうこともできます。チェック項目には、たとえば「ワクチン証明書を提出しました」「預ける動物の健康状態を申告しました」といった確認項目を設定できます。

ただし、契約書の内容を決めるのは事業者です。izyPetでは、責任の範囲やキャンセル料の条項が消費者契約法に適合しているかどうかの確認は行いません。登録番号など、保管業者として広告に表示する必要がある事項については、契約書に専用の記載欄がありません。契約書にも記載したい場合は、追加情報の欄に入力してください。また、izyPetの署名は手書きの署名を画像として保存するもので、電子署名法3条の電子署名にあたるかどうかは確認されていません。

➜ 詳しくは: 予約契約書と電子署名

まとめ

  1. 動物愛護管理法21条の4に定められた対面説明は、販売業者の義務です。ペットホテル、トリミングサロン、ペットシッター(保管業)には適用されません。
  2. 保管業者にも、広告の表示、重要事項を説明する職員の配置、受け入れ時の健康確認といったルールがあります。
  3. 「一切責任を負いません」という条項は、消費者契約法8条により無効です。
  4. 賠償額に上限を設ける場合は、軽過失の場合に限ることを条項内で明示する必要があります。
  5. 有償で動物を預かる事業者には善管注意義務があります。責任がないことを示さなければ、賠償責任を免れません。
  6. 混合ワクチンの接種証明書の提出は法律上の義務ではありませんが、契約の条件にすることはできます。
  7. 電子契約も有効です。

よくある質問

ペットホテルの契約前に、対面で説明しなければなりませんか?

法律上の義務はありません。動物愛護管理法21条の4に定められた対面説明は、動物を販売する事業者の義務です。ただし、受け入れ時には動物の健康状態を確認する必要があるため(基準省令2条)、問診票を使って飼い主に聞き取りを行い、記録を残しておくと安心です。

「当店は一切責任を負いません」と契約書に書いてもよいですか?

書いても無効です。事業者の責任をすべて免除する条項は、消費者契約法8条1項により無効になります。不可抗力による事故など、事業者に責任がない場合には賠償責任を負わないという趣旨であれば、その範囲を明確にして記載する必要があります。

賠償額に上限を設けることはできますか?

軽過失の場合に限ることを条項内で明示していれば、原則として認められます(消費者契約法8条3項)。故意や重大な過失による場合まで上限を設けることはできません。また、上限が極端に低い場合は、10条によって無効とされる可能性があります。

ワクチン接種証明書の提出を求めてもよいですか?

求めることができます。混合ワクチンの接種は法律上の義務ではありませんが、預かりの条件として契約で定めることは可能です。犬に狂犬病の予防注射を受けさせることは、狂犬病予防法5条により飼い主の義務とされています。

電子署名で結んだ契約は有効ですか?

有効です。契約は書面がなくても成立します(民法522条2項)。本人だけが行うことができる電子署名があれば、紙の契約書と同様に、真正に成立したものと推定されます(電子署名法3条)。

ペットシッターにも同じルールが適用されますか?

動物愛護管理法上、ペットシッターも保管業にあたり、ペットホテルと同じルールが適用されます。ただし、民法上の契約の性質は異なる場合があります。飼い主の自宅を訪問して説明するペットシッターは、重要事項を説明する職員の要件を満たしている必要があります(施行規則3条)。

⚠️ この記事は、個別の事案に対する法的助言を提供するものではありません。 2026年10月16日時点で確認できた法令と公的資料をもとに、一般的な内容をまとめています。消費者契約法については、消費者庁の検討会で見直しが議論されていますが、この時点で改正は成立していません。トリミングやペットシッターの契約の性質、賠償額の上限条項がどこまで認められるかなど、解釈が分かれる点もあります。契約書を作成する際は、弁護士などの専門家にご相談ください。

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